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大阪地方裁判所 昭和32年(ワ)5642号 判決 1958年7月11日

原告

右代表者法務大臣

唐沢俊樹

右指定代理人検事

平田浩

法務事務官 原矢八

大蔵事務官 石橋明

大阪市北区市之町十三番地

被告

島田市太郎

右訴訟代理人弁護士

徳矢馨

右当事者間の昭和三十二年(ワ)第五六四二号差押債権請求事件について、当裁判所は昭和三十三年五月二十八日終結した口頭弁論にもとずき、次のとおり判決する。

主文

被告は原告に対し金三十五万円及びこれに対する昭和三十二年十二月七日より右支払済にいたるまで年五分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告の負担とする。

この判決は仮に執行することが出来る。

事実

原告指定代理人は、「被告は原告に対し三十五万円及びこれに対する昭和三十二年十二月七日より右支払済にいたるまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決並びに仮執行の宣言を求め、その請求の原因として、

原告は訴外高田重治に対し昭和三十年度所得税の本税及び加算税合計六百九十四万五千三百円の国税債権を有する。高田は被告との間に、昭和三十年七月二十六日、かねて右高田が被告に対して有していた金額四十五万円の約束手形金債権を消費貸借の目的とし、弁済期同年同月より翌三十一年三月末日まで毎月五万円宛の月賦弁済の約束にて準消費貸借契約を締結し、同年二月十日現在被告に対し、残額三十五万円の債権を有していた。そこで原告は右同日前記国税債権の滞納処分として右高田の右債権を差押えると共に被告に対し、その旨通知し被告に対しこれが支払を求めたが、被告においてこれを支払わない。よつて原告は被告に対し右差押債権額三十五万円及びこれに対する本件支払命令送達の翌日たる昭和三十二年十二月七日より右完済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

と述べ、

立証として甲第一、二号証、第三号証の一、二、三を提出した。

被告訴訟代理人は原告の請求は棄却する訴訟費用は原告の負担とするとの判決を求め、答弁として、

原告主張の差押通知が被告に到達したことは認めるが原告が、訴外高田に対し、その主張の如き国税債権を有している事実は不知、その余の原告主張事実は争う。

と述べ、

立証として、被告本人の尋問を求め甲第一号証、第三号証の一、二、三の成立を認め甲第二号証は署名捺印の部分だけ成立を認め、その余の部分を否認した。

理由

成立に争のない甲第一号証によれば、原告は訴外高田重治に対し、昭和三十一年二月十日現在において納期の経過した昭和三十年度所得税の本税及び加算税合計六百九十四万五千三百円の国税債権を有することが認められ、被告本人尋問の結果及びこれにより真正に成立したものと認められる甲第二号証及び成立に争のない甲第三号証の一、二、三によれば被告は訴外高田に対し合計金額四十五万円の約束手形金債務を負担していたこと及び被告は昭和三十年七月二十六日右高田との間に右債務を消費貸借の目的として弁済期を、同日金五万円同年八月末日より翌年三月末日まで毎月末日に五万円宛とする準消費貸借契約を締結したことが認められる。そして、原告が同年二月十日右国税債権に基き、右高田の被告に対する貸金債権三十五万円を差押え被告に対しその旨通知をなした事実については当事者間に争はない。

次に本件にあらわれたすべての証拠によるも、昭和三十一年二月十日までに被告において高田に対し十万円をこえる弁済をした事実が認められないので、原告は右同日の被告に対する債権差押えの通知(国税徴収法第二十三条の一の二項)により、右高田に代位して同人の右債権三十五万円の債権を取立てる権限を取得したというべきである。

そうなると、被告は原告に対し金三十五万円及びこれに対する本件支払命令送達の翌日たる昭和三十二年十二月七日より右完済に至るまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払義務あること明らかであるから、その支払を求める原告の本訴請求は、正当であるからこれを認容し訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を、仮執行の宣言につき同法第百九十六条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 本井巽)

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